仮説その2:ボディによる最高速度の違いについて検証
20 Oct 2001


 前回、TA04Rにデータロガーを搭載してタミヤサーキットを走行、データ解析の結果2つの仮説が導き出されました。今回はそのうちの一つ、

●ラジコンボディの空力は最高速度に影響しない。

 という、無謀なほうの仮説(笑)を検証してみます。

 これはアルテッツアボディとレーシングトラックボディで比べた時に、最高速度がほとんど変わらないという、驚くべき測定結果によるものです。
ボディ
アルテッツア:49.6km/h
レーシングトラック:49.9km/h
 ・・・・みるからに空力特性が異なるのに、タミヤサーキット:バックストレート最高速度はほとんどかわりません。そこで上記の仮説を考えたのですが、常識ではそんなわけないですよねー。この点について、とあるMLで指摘をいただきました。

 それは、このロガーの速度測定の方法から考えると、空気抵抗の多いトラックの場合、実際の走行スピードよりも、見かけ上高い測定値が記録されてしまう可能性がある、という点でした。
 このロガー、走行しているスピードそのものを測定しているわけではなく、一定時間内のスパーギアの回転数を測定しています。この数字にギア比やタイヤ径などかけあわせて、走行スピードとみなしています。
 つまり、ここで実際に測定しているのは「タイヤの回転数」なのです。

 一方、例えば直径が64mmのタイヤが一周したときに、 64mm X 3.14 = 201mmいつも進むかというと、そうではない場合があります。これは、加速のために大きな駆動力を発生している時や、コーナリング時にコーナリングフォースを発生している時です。このようなタイヤが大きな摩擦力を発生している時にはタイヤの接地面が「ヨレ」を発生しており、見かけ上、多少スリップした状態になっています。

 このような状態では、「回転数のわりには、実際の速度はでていない」ということが起こります。

 今回のツーリングボディとトラックボディを比べた時に、最高速度付近での空気抵抗はトラックボディの方が大きいであろうことは容易に想像できます。最高速度においては、空気抵抗などの走行抵抗と、タイヤの発生する駆動力がつりあっていますから、つまり空気抵抗の大きなトラックボディの方が、より大きな駆動力を発生しているはずです。

 これによりトラックボディの方が大きな「タイヤのヨレ」を発生し、回転数は同じであってもツーリングボディの方が実際の走行スピードは高いのではないか?という可能性です。

 ん〜なるほどなるほど。そうですよねー。この可能性大だなー。と思い、検証してみることにしました。

 ということで、今回は「実際の走行スピード」を求めるため、最高速度における「区間タイム」を記録してみることにしました。同時に回転数もロギングし、この値と比較してみます。区間タイムは、車体に積んだ赤外線センサーが、10m間隔で設置された装置からの赤外線を感知することにより測定します。

 近所の駐車場で測定しました。休日の家族サービスの合間を縫って朝5:30出撃!!

測定風景
赤外線発信ユニット
解析中・・・

 三脚2つに発信ユニットを固定し、10m間隔で設置しました。それぞれのボディで何回かセンサーの前をフルスロットル走行し、地べたに座りこんでダウンロード、解析。犬をつれたおばさんと「あらあらラジコン?ここ、広くてちょうどいいわねー」「ええ、そうなんすよ。ははは」などとさわやかな会話も交わしつつ、測定実験は順調に進行しました。

 各ボディについて7-9回の区間タイム&回転数を記録できました。このうちのトップ3を平均し、比較してみます。

最高速度
回転数測定による値
区間タイム測定による値
アルテッツア
トラック
アルテッツア
トラック
51.2km/h
51.2km/h
53.0km/h
51.9km/h

 まず、前回と同様の測定法、「回転数測定」の数字ですが、51.2km/hでやはりツーリングボディ、トラックボディでの違いはまったくありませんでした。
 しかし、「区間タイム」測定による測定値は、若干(約1km/h)、ツーリングの方が速いという結果になりました。

 つまりこれは、指摘いただいたとおり「トラックボディの方が実際の走行速度はツーリングボディに比べて若干低い。しかしタイヤスリップが大きいため回転数は同じ値である。」ということが言えそうです。

 しかし、その差はわずかに1km/h。約50km/hのスピードが出ているのならばたった2%の差異です。この数字をみた時、ほとんど誤差の範囲内なのでは・・?と思いました。しかし考えてみれば、2%の速度差があった場合、タミヤサーキットではバックストレートが約50mありますから、ここで50m X 2% = 1mの差がつきます。約2車長分です。こう考えるとけっこう大きいのかな?どうなんでしょ。

 というわけで、結論!!

補足:
空気抵抗などによる「スリップロス」があるならば「回転数測定」による値の方が「区間タイム測定」による値より大きくなるはずなのですが、今回のデータでは逆に小さい結果になっています。これは絶対値の比較という点で測定方法間の比較精度が低いためだと思われます。
「区間タイム」に見られたボディ間の差の、統計学的な有意性の有無については検討しておりませんが、ぱっとみた感じでは「明らかに差がありそう」といった感触^^;)です。


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