TA04Rロガーのデータ解析
27 Sep 2001
データロガーは、10msごとに横G(コーナリングフォース)を、300msごとにスパーの回転数を測定します。スパーの回転数にギア比、タイヤ径を掛け合わせることで速度の近似値として扱うことができます。ロガーは約3分間の間のデータを記録できるメモリを搭載しています。
下のグラフは測定結果の例です。赤いグラフがコーナリングフォース、青いグラフが速度です。
約15秒周期で規則正しいパターンを描いているのがわかると思います。各周期が一周分のデータということになります。
拡大してみますと、
コーナリングフォースは中間の0G状態をはさんで、上に行くほど右方向へのGが(つまり左コーナーです)、下へ行くほど左方向へGがかかっている(右コーナー)状態を表しています。
グラフ中の数字はコース図の数字に対応しています。それぞののグラフとコース図を比較してトレースすると、周回の様子をイメージすることができると思います。
速度は全体的に高いほど、またコーナリングフォースは上下の振幅が大きいほど、走行性能が優れている、ということになると思います。
さて、本題に入ります。今回はボディを変えたり、セッティングを変えて走行したときのそれぞれのデータを取得しています。これらの違いが数字に反映されるか?ということを調べてみましょう。また、以前取得したF103のデータもありますのでこれとも比較してみます。
各周回のデータを、コーナーごとに分けて、それぞれのコーナリングフォース、およびコーナリングスピードを集計します。コーナリングフォースは、各コーナー時のグラフ(平滑化した近似曲線)から、大体平均値であろうと思われる値を0.05G単位で目測しました。コーナリングスピードは、コーナリング時の測定区間で最もスピードが落ちた時点の速度としました。周回ごとにデータをまとめ、約10周分のデータを平均しました。
このような集計を、以下の4種類の走行データで比較してみます。
(1)1パック目
アルテッツァボディ、デフォルト(説明書の)セッティングで走行
ちょっと反応がダルだなー、コーナー立ち上がりでリアが安定しないなーと思
いつつ走ったデータです。上のグラフはこのときのものです。
(2) 2パック目
トラックボディ、デフォルトセッティング
やっぱりリアの巻きがひどくなったなー。初期があまり曲がらないなー。
でもかっちょいいから許す。といった感じでした。
(3) 6パック目
トラックボディ、エキスパートセッティング
エキスパートの方が完璧にセッティングしてくれた状態です。
(2)に比べ、初期がぐいぐい入り、リアも格段に安定しました。
ただし、この頃は路面温度がかなり下がり、グリップが悪くなっていました。
(4) F103
F103(ルマン)シャシーのデータ
ちょうど一年前にF103シャシーでデータを取得したときのものです。
リア2駆代表データとして、TA04と比較してみます。
ただし、このときに速度データは取れていませんでしたのでGのみとの比較になります。
その結果は!!
スプーン=上のコース図で@のコーナー、ヘアピン=A、S字入口=B、日本平=C、サウス=D、ノース=Eです。
面白いことに、まったく予想と反する結果になりました。
走らせた時の感覚では、
アルテッツァ(1本目)=セッティング済のトラック(6)>F103>未セットのトラック(2)
の順のコーナリング性能かな?と予想していたのですが、実際には大部分のコーナーでコーナリングフォース、速度の両数値ともに
未セットのトラック(2)>アルテッツァ(1本目)>F103>セッティング済のトラック(6)
という順番です。なぜだ??
・・・いろいろ考えたのですが、結局これらの数字はセッティングうんぬんではなく、「タイヤのグリップ力」を素直に反映したものと思われます。この時のタイヤはタミヤB2タイヤ(ハードインナー)だったのですが、思いのほか涼しい日で、Aで走ってた人もいたくらいでした。上記のデータ中、もっとも路面温度が高かったのが2本目のときで、6本目は明らかにミスマッチでした。
走行時に感じた、セッティングの違いによる「走らせやすさ」の差異は今回の数字にはあらわれませんでした。ただし、コーナリング中のG変化のパターンとして、4駆と2駆の違いが見られました。
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TA04のコーナリングフォース変化 |
F103のコーナリングフォース |
4駆の場合にはコーナリング進入から立ち上がりまでコーナリングフォースがほぼ変わらず、フラットなグラフになっているのに対し、2駆のF103ではコーナー後半で徐々にGが抜けていき、グラフの頂点が斜めになっています。
これは感覚的にもよく理解できるプロファイルで、つまり「クリッピングポイントを抜けた後、徐々にスロットルを入れていくとコーナリング半径を大きくしながらアウトへ抜けていく」独特の2駆の感覚をあらわしているのだと思います。
あと、「最高速度」も比較してみました。
これはバックストレートの最高速度速度を平均したものですが、なんと!!アルテッツァもトラックもまったく変わらないじゃあないですか!!こいつぁおどろいた!!。
この結果が正しいとすると、
「ラジコンのボディの空力は最高速度にそれほど影響しない」
という推論になります。本当??
・・・実は、トラックボディのCD値がメチャクチャ低かったりして(笑)。
まとめ
今回の解析から、次の仮説が導き出されました。
●コーナリングフォース、コーナリングスピードの実測値はタイヤグリップのみを反映する
●ラジコンボディの空気力学的プロファイルは最高速度に影響しない。
今後は、ユニットの改良を試みつつ、今回の大胆な仮説を検証するため、タイヤの種類を変えてみての数値変化なども探ってみるつもりです。これらの数字を比較することで、タイヤのグリップ力を定量的に語ることができるようになればおもしろいと思います。また、ラップタイムとも比較してみたいですね。
2001/11/2 update!! タイヤによるコーナリングフォースの違いについて検証
2001/10/20 update!! ボディの空力に関する仮説の検証
備考:今回の車体データ
シャシー:TA04R
モーター:タミヤ23T typeT
ギア:ピニオン43T, スパー 120T
タイヤ:タミヤFMミディアムナローB2, モールドインナーハード
フロントワンウェイ