仮説その1:タイヤによるコーナリングフォースの違いについて検証
2 Nov 2001
●コーナリングフォースの実測値はタイヤグリップのみを反映する
に関してもう少し調べてみます。
これは以前の測定で、
○ ばっちりセッティング by エキスパートドライバー
○ へなちょこセッティング by かわにし
での測定データを比べたときに、予想に反してなぜか「ばっちりセッティング」のほうがコーナリングフォースが少なかった、という経験からです。その結果は、「ばっちりセッティング」でのぐいぐい曲っていた感覚から考えると、どうも納得のいかないものでした。
しかしよくよく考えてみると、それぞれのデータを測定したときの路面温度はかなり異なっていて、「へなちょこセッティング」で走らせていた時間帯のほうが路面温度が高く、高温用のタイヤ(タミヤB2)にマッチしていたのでは・・という点に思いあたりました。
つまり、コーナリングフォースはセッティングによる挙動変化よりも、タイヤのグリップ力を「素直」に反映しているのだと言う解釈です。
そこで今回は、実際にグリップの違うタイヤを用意して調べてみることにしました。
まず、この時期の私の定番、タミヤのファイバーモールドAと、ちょっと時期はずれのB2を用意しました。
まあこの2つでいいだろ。と思っていたら、タミヤサーキットのエキスパート、RED WINGさんから、
「高いグリップ力がほしいならSOREXの28Rあたりがいいよ」
と教えていただきました。
これまで私、生まれてこのかたタミヤ以外のタイヤは使ったことがなかったのですが(^^; ここは一発、エキスパートも使うSOREXタイヤなるものを是非ためしてみよう!!と思い、入手してみることにしました。・・・しかしあちこち探してみても何故か見つからず、やっぱり、まいいか、とあきらめていました。
・・・するとRED WINGさんが再び本HPチャットルームにさっそうと現れて
「まかせなさい」
との一言を残して疾風のように去っていきました。
10/27土曜日、タミヤサーキットはいい季節もあいまって大にぎわいでした。
おお!これは・・!
SOREXタイヤだ!!はじめて見た・・・(笑)。RED WINGさん、インナーやホイルまでありがとう!!
で、さっそく現地でタイヤ貼りをしたのですが、これが思ったより大変でした。外での細かい作業って、けっこうやりづらいですよねー。RED WINGさん、次は完成品のSOREXお願い(笑)。
はじめはTypeA+アルテッツアボディでそろそろと様子見・・・。なかなか調子いいじゃん。なんか反応がいいなー、おお!切り返しが早い。何で?・・・・あ、そういえばカーボンシャシーにしたんだった。忘れてた。わはは。
この時、横Gと回転数に加え赤外線によるラップ測定も同時に行いました。
ただしラップタイムは数日間を要するデータ解析の後、やっと判明します。意味ないじゃん。わはは。
・・・ええと、たった今解析の終わった結果によると、ベストが13.5ですね。ええっ!?本当?
・・・なんか測定ミスっぽいので、「非公認記録」とします。^^;)
その後、(なぜかまたトラックボディに換装し)3種類のタイヤで走行してコーナリングフォースの記録をとってみました。
SOREXに換えた時はそのグリップにぶったまげました。へ〜こんなに違うもんなのか〜。曲がる曲がる!
と、調子にのってぐいぐい曲げていたらヘアピンでコケました^^;)。
・・おいおいそれは「巻く」ところでしょ。スポンジタイヤ履いたミニッツじゃないんだから。と操縦台からツッコミをいれたくなるようなグリップです。(・・・っていうか、コケるのはボディのせいなんですけど)
記録をとった後もSOREXでばりばり遊んで終了しました。トラックボディも楽しいんですが、最後はアルテッツアにしてガンガン走らせました。が、周りのみなさんの速いこと!!直線ではついていけるんですが、コーナリングできっちり差がつくのです。これはテクニックに加えセッティング能力の差でもあるのでしょうね。
というわけで、楽しかったです〜。またみなさん、お相手してくださいねー。じゃ〜ね〜。
じゃなくて、データデータ。(^^;
ええと、現地でダウンロードした6本分のデータを家に帰ってから解析しました。
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タイヤのグリップの違いを比べるために、ヘアピン(A:低速コーナー)、S字入口(B:中速コーナー)、ノースC.(E:高速コーナー)の3点についてコーナリングフォースを集計しました。
例えば上のグラフでB「S字入口」部分を拡大したのが下図です。
ここで、矢印の区間のコーナリングフォース値の平均値を求め、各タイヤごとに8〜10周の数値を集計します。ヘアピン、ノースCについても同様に集計しました。(・・・って、さらっと書いてますが時間がかかるんですよこの解析作業・・・うう)
その結果は!!
3本のグラフのまとまりごとに、左からタミヤB2、タミヤA、SOREX28Rです。青のグラフはノースC(ストレートエンドの高速コーナー)、茶色はヘアピン、クリーム色がS字入口のコーナーです。
グラフが高いほど大きなコーナリングフォースを発生していることをあらわしています。
グラフ先端にあるバーは「標準偏差」をあらわしています。データにどのくらいのばらつきがあるのか、という目安です。
予想通り、というか当然なのですが、やはりグリップが高いと考えられているタイヤほど、全体的に高いコーナリングフォースを発生していることがわかります。
さらにコーナーごとに分けて比べてみますと、各タイヤ間で、「ヘアピン」におけるグリップ差が大きいようです。それにくらべ、もう少しRのゆるい「S字入口」ではTypeAとSOREXの差は縮まっており、高速コーナーの「ノースC」に到ってはB2でもそんなに変わりません。ノースCではどんなタイヤでも1.1G前後と、コーナリングフォース自体も小さな値になっています。
これは高速コーナーになるほど、「大きなコーナリングフォースは必要でない」ということだと思います。コーナー進入での大きなコーナリングフォース=大きな舵角=スピードロスにつながってしまいますし、コーナー出口では加速のために、タイヤグリップを「縦方向」に使いますから横方向へのコーナリングフォースは発生できない状態になっており、結局スムーズなコーナリングのためには横方向への大きなコーナリングフォースは不要だということだと思います。
以上、どうやら結論としては
●”低速コーナーにおける”コーナリングフォースはタイヤのグリップ力を反映した値になる
ということになります。今回のように、コーナリングフォースを測定することで、逆にタイヤグリップを定量化することができるかもしれません。
・・・ただし、以上のデータはすべて「トラックボディの場合」であることにご留意ください。わはは。
おまけ:
アルテッツアと比較すると、
こんな感じになります。
やはりノース(高速)コーナーでアルテッツアボディが優れているようにみえます。が、あとは・・・ちょっとよくわかんないですね。アルテッツアでデータのばらつきが大きいのは、比較的自由にライン取りを変えているからかもしれません。トラックの場合コーナリング中はあまり融通がききませんからねー(笑)。
備考:今回の車体データ
シャシー:TA04R
モーター:タミヤ23T typeT
ギア:ピニオン43T, スパー 118T
フロントワンウェイ、カーボンシャシー