なるべく軽くクルマを仕上げることは重要だといわれていますが、
では例えばどのくらい軽量化すればラップタイムが0.1秒縮まるのでしょうか?
これまでのシステムで計算することもできますが、その前にちょっと改良する点がありますのでここで述べたいと思います。ここまでにGTvsハコの比較で、駆動力によるタイヤグリップのロスをシステムに組み入れました。今回は、「高速コーナーでトルク不足が発生したときに減速してしまう」状態を組み入れてみます。
これは実際にサーキットを走らせていて感じることなのですが、クルマの発生するノイズ(回転数に比例して音の高さが変わる)に注意していると、高速コーナーでは明らかに減速しているように思えます。この傾向は舵角を大きくするとさらに顕著になります。高速コーナー時にトルクが不足する要素はjugem^2さんの原著でも指摘されていて、コーナリング時にはころがり抵抗が直進時の数倍になる状態を想定しています。そこで、
コーナリング時のころがり抵抗=直進時のころがり抵抗*定数(a)
コーナリング中の推進力=モーターの発生する最大推進力−(コーナリング時のころがり抵抗+空気抵抗)
として、コーナリング中の推進力が正の値だったら、減速なしでタイヤグリップ限界速度でのコーナリングが可能であるとみなし、これまでと同じ計算をします。負であったときにはその負の推進力に応じて減速が起こるということになり、この場合には0.01s毎の速度低下を計算し、次の区間で再び新しい速度に対する走行抵抗値を計算するというプロセスをコーナリング終了まで繰り返し、近似することにしました。
実際のシミュレーションでは定数(a)=3として計算してみました(後述)。するとおおむねRが7m以上のコーナーで減速が発生し、ある例では進入時9.3m/sの速度が8.9m/sくらいまで低下しました。
なぜこのファクターを取り入れたかというと、実はこの要因が、ラップタイムに対する重量増加の影響に大きく効いてくると思われたからです。コーナーで減速が起きると言うことは、当然その後のストレートでの加速がより必要になり、周回中に加速部分の占める割合が大きく影響することになるからです。
つぎにパラメータについても少し手を加えました。これまでのシステムのマイナーチェンジにつれて、走行抵抗が増える方向にいってしまい、現実のラップから離れてきてしまいました。そこで実測値のあるラップ、各コーナーの速度や、ゴムで測ったころがり抵抗(我田引水^^;))あるいは私の感覚をもとにパラメータをいろいろ変えてこのくらいかなというところまで変えてみました。
タイヤグリップ 1.2G→1.25G
ころがり抵抗 5%→6.7%
コーナリング時にころがり抵抗は直進時の何倍になるか?→3(定数(a))
また、GTvsハコで検討した後輪にかかる駆動力は
コーナリング時に後輪にかかる駆動力=コーナリング時のころがり抵抗
として考えました。
長い前置きでしたが、ここで実際のラップの計算結果をだしてみます。
車重(kg) |
ラップタイム(s) |
1.50kgとの差 |
1.50 |
16.934 |
- |
1.53 |
16.952 |
0.018 |
1.60 |
17.006 |
0.072 |
1.70 |
17.062 |
0.128 |
各車重での通過時間(s) |
|||||
# |
1.50kg |
1.53kg |
1.60kg |
1.70kg |
|
1 |
コーナー |
1.846 |
1.846 |
1.849 |
1.852 |
2 |
ストレート |
0.318 |
0.318 |
0.318 |
0.318 |
3 |
コーナー |
1.421 |
1.421 |
1.423 |
1.423 |
4 |
ストレート |
1.167 |
1.171 |
1.180 |
1.185 |
5 |
コーナー |
1.291 |
1.291 |
1.293 |
1.293 |
6 |
ストレート |
0.326 |
0.326 |
0.328 |
0.328 |
7 |
コーナー |
2.276 |
2.280 |
2.290 |
2.298 |
8 |
ストレート |
1.075 |
1.077 |
1.081 |
1.086 |
9 |
コーナー |
1.586 |
1.589 |
1.595 |
1.603 |
10 |
ストレート |
2.511 |
2.513 |
2.520 |
2.530 |
11 |
コーナー |
2.252 |
2.255 |
2.263 |
2.275 |
12 |
ストレート |
0.863 |
0.864 |
0.866 |
0.872 |
周回の各部分を比較してみると、コーナー部分でも軽い方が若干有利ですが(ダウンフォースが効きやすくなっているからだと思います)、やはり加速区間の差が大きいようです。周回の中で比較的長い加速区間2つ(#4,#10ストレート)と、バックストレート直後の#11コーナー(このコーナー速度はバックストレートの加速が効いてきます)をあわせたタイムを比較してみると、12区間中この3区間のみでラップ差の約50%を稼いでいます。
以上の検討から、
「10g、20gの軽量化にカリカリすることはないが、他車より70g重かったらやばい。」
という感触を得ました。
もちろん、ここまで述べたことはサーキットや車体、ボディ、モーターなどの前提条件に大きく依存します。実際にボディをGTからハコに変えたり、タイヤのグリップを落としたりして計算してみると、ラップ差は若干縮まってしまうようでした。