走行計算 for ワールドドローム その1
45°のバンクコースを90km/hで走行する時
車体にはどんな力が加わっているのだろうか?
02 Nov 2000


 ワールドドロームとはRC World主催のオーバルレースです。静岡県:伊豆は修善寺サイクルスポーツセンター(CSC)の250mバンクトラックで行うハイスピードレースです。

 自宅から近所なので、ラジコンをはじめてから毎回見に行ってます。見てるだけでもおもしろいんだこれが。なんといっても、速えぇ〜!。90km/hものスピードでラジコンがスリバチ状のコースをガンガン周回します。今年は130km/hオーバーの車も現れました。もう圧巻です。しかも時々勢いあまって観客めがけて飛び出してきます。スリル満点です(笑)。

 このレース、今年もやはり見にいったのですが、今回はオヤジラジコンフリーク集団:AORcのドローマーの方たちとお話することができました。・・・・で、どなたと話しても必ず言われる一言・・

 ・・・・というわけで、来年は出場することにしました。来年といっても5月?なのでそんなに時間はありません。何をしたらいいのか!?

 よくわからないので、とりあえず、あのバンクコースを走行した時の力学を考えてみることにしました。わはは。

(1)コースの幾何
 まず、コースがどんな形をしているのかを考えます。CSCの250mピストは直線部7°、最大バンク角45°の傾斜を持つコースのようです。これと典型的な250mピストの寸法(シドニーオリンピックのvolodrome参考)をあわせて考えますと、多分Fig.1のような格好をしているものと思われます。Fig.2 は走行の際目安となるマーカーラインです。写真などからの推定値ですから誤差のある数字です。

Fig.1 CSC 250mピストの幾何(推定)

Fig.2 コースの走行帯(推定)


コース上空から垂直方向に見たとき、コーナリング半径はそれぞれ

測定線(白)走行時

27.1m

外帯線(赤)走行時

27.6m

青ライン走行時

    28.8m

コース幅7割の外側ライン

30.5m

となります(バンク角45°の地点)。

(2)バンク走行時、車体の横方向および上下方向に作用する力
 やはり一番興味があるのがこれです。最大45°ものバンク角のおかげで、コーナリング中はほとんどステアを切っていないんだそうです。バンクを走行している時の、重力やコーナリングフォースの関係はどうなってるんでしょうか。ここでは、コースを垂直に見下ろした時に、コーナーと同心円状のライン上を走行する時について考えてみます。
 まず、重力加速度
車体推進方向の軸から見た図です。車体には1Gの重力がかかっていますが、このベクトルを路面に対し水平および垂直方向に分解してみます。バンク角θによって分配のバランスが変わってきます。もし45°のコーナー最深部で停止すると、約0.7Gの力ですり鉢の底へひきこまれることになります。

 次に、遠心力
 遠心力はコーナリング面に沿って速度の2乗に比例、コーナリング半径に反比例して発生します。これも同様に二成分のベクトルに分解してみます。

 そして、これらを合成してみると
 Fhは車体の水平方向に作用する力です。コーナリングスピードが上がるほど、また、コーナリング半径が小さくなるほど外に飛び出そうとする力が大きくなることになります。Fvは路面に垂直方向に車体を押さえつける方向の力で、コーナリングスピードが上がるほど強くなります。実際には、これに加えボディの発生する空気力学的なダウンフォースも加わります。

 では、実際にこの二つの式からFv, Fhを算出してみます。以下はすべてバンク角=45°としてあります。、

 Fh(コーナリングフォース ; G)

速度(km/h)

70

90

130

R(m)
(コーナリング半径)

27.5
(赤ライン)

0.28

0.93

2.71

29
(青ライン)

0.23

0.85

2.54

31.5
(外側7割)

0.16

0.72

2.28


Fv(縦G; G)

速度(km/h)

70

90

130

R(m)
(コーナリング半径)

27.5
(赤ライン)

1.70

2.35

4.12

29
(青ライン)

1.65

2.26

3.95

31.5
(外側7割)

1.57

2.14

3.69


・・・・にわかには信じ難い数字が並んでいます(笑)。特に今年のインセインクラスの最高記録、130km/h付近ではコーナリングフォースは約2.5Gという異常に高い値が出ています(以前タミヤサーキット、F103LMで実測した時は限界コーナリングフォースが1.5G付近でした)。ステア操作をほとんどしないバンク走行で、この高い値を示すのはどういうことでしょうか?

 この理由は下の表のFvに関係があります。Fvは車体に垂直にかかる力です。130km/hではバンク角によって4Gもの高いダウンフォースが得られているのです。タイヤのグリップ力はタイヤに垂直にかかる力に比例しますから単純に考えて平地走行時の四倍のタイヤグリップを発生しているということになります。おそろしや・・・。

 私の目標にしているトラッククラスでは90km/h位出るということなので、以下、この数字で考えていきますと、ええと、最大縦Gは約2.3Gです。実際にはこれに空力によるダウンフォースが加わります。空力的にはトラックボディをツーリングのハコボディに近いと考え、
ダウンフォース D(kgf) = CL * S * v / 16 ( CL : ダウンフォース係数、S : 前面投影面積, m^2、v : 速度,m/s) より
D = 約100g
あれ?全然効いてないじゃん。仮に、ツーリングのGTボディなみと考えると
D = 約700g です。2.3G下においては車重1300gとして23%のダウンフォースアップですが、実際の所はあまりたいしたことなさそうですね。じゃ、無視します。

 ・・ということで、バンクコーナリング時のサスの状態は1300*(2.35-1)=約1800gのおもりを積んで、右側へ1300*0.93=約1200gの力で引っ張ればわかるということになります。

ホントか!?
これを実証するために、
宣言!!かわにしはドローム参加にあたって、Fv(縦G)Fh(横G)実測を最大の課題とします。


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